外国人の在留許可申請に関しては、勘違いなさっている方が非常に多いという印象を受けます。その外国人の勤勉さ、日本に住みたいという情熱、雇う方の事業者様からの、日本人より頑張っている外国人に対して在留資格の許可が認められないのはおかしい、と言ったものです。
しかし、日本人労働者の雇用機会を奪うとか、移民問題とか、国民の間でも見解や主張が分かれているところで、国の政策として非常にシビアな法律と運用にならざるを得ない面があり、これは日本に限らず、その国ごとの事情で厳しく扱われており、例えば、日本では留学生のアルバイトが週28時間まで認められていますが、留学生がアルバイトをすることを全く認めず、アルバイトすると強制退去させられる国もあるのです。
また遵法精神が薄い国民性というものがあるような気はしますが、むしろ日本と同レベルの、例えば人権に対する配慮とか自由意志への尊重とか、法を重んずると気質とかを求めるのは無理があります。公的証明といえど悪気なく書類の偽造をしてしまう可能性さえあります。違法行為はバレないで上手くやることが頭が良いとか、世渡り上手という考え方も十分にあり得るのです。
これはニュースに出てたと思いますが、外国の役所で交付された日がその国の祝日にあたり、役所から交付された書類でないことが判明したという事例がありました。
これも当事務所ではないですが、難民申請の相談があったところ、ドイツで100万人位難民を受け入れるというニュースが入り、その外国人は急いでドイツに行ってくると言って立ち去ったという案件がありました。日本からドイツに渡航する旅費が捻出できる自称ばかりの難民だったということです。
日本という国も日本人も欠点はありますし、当たり前すぎて日本人が意識できないところもあると思います。外国人の持つハングリーさとか、根性とか、必死さとか、楽ではなく難儀そうな生活ぶりの中で感じられる人となりとかにハッとさせられたりします。私が外国人と接するときは、考え方や価値観が違っていて当たり前、要は、その外国人が日本の文化や価値観、ライフスタイルを理解しようとし、尊重しようとしているかを注意深く感じるようにしています。
日本語の習得レベルはそれぞれですが、そもそも外国語の習得は容易なものではありませんし、言葉はたどたどしくとも、自分なりに受け取って考え、咀嚼し、日本語で伝えようという姿勢は、平均的な日本人よりもよほどしっかりしている印象を受けます。そもそも日本で暮らそうという外国人は、大なり小なり命がけなんだろうと思います。彼らは、何かを日本で学ぶため、あるいは日本で稼ぐことを目的に入国してきますが、文化や価値観の違いがあるのは当然として、かれらの姿勢に我々日本人が学ばないといけないところもたくさんある気がします。
話が脱線しましたが、在留資格の手続きに関して最も大事な視点は、その許可を下すことが日本の国益になるかという視点だと思います。
その延長線上で許可申請手続きがキチンと組み立てられるかを考え、そのための材料として、外国人の能力や人となりを掘り起こし、受け入れ企業の体制やその他の環境を整えるように協議を重ねます。また可能性のある阻害要因の検討漏れが無いかのチェックも重要になります。
*例えば、2019年6月現在、強制退去に関してイランが受入拒否をしているため、特定技能による就労の在留資格許可の対象から、イラン人が除外されています。
入管法は、外国人に対して非常に冷たい法律と言えるでしょう。
数年前のことですが、在留資格の更新許可申請の書類を持ってきた方に、入管から「本人ですか?」という質問があり、申請人が「うちの母ですが、体調が悪くて、、」と返答すると、入管の方は「本人じゃないと申請出来ません。」と返答しただけで、別の事務作業をしていました。
その間、10秒程度の会話で話が終わっていました。
弁護士か行政書士で、申請取次の登録をしている者以外は、原則として本人しか申請出来ません。
入管は、判断がつかない場合は不許可にします。
日本の役所に普通にある異議申し立ては、入管の手続きにおいてはほぼ認められておりません。
異議申し立てをしたいと思うなら、日本の裁判所に訴えることになります。
外国人が、強制退去になる状況で、日本の裁判所に、弁護士を探して依頼し、裁判費用も払わないといけません。ものすごいハードルです。
在留資格の基準を満たしている外国人に関しては、ポイントを外さないで立証書面をある程度提出できれば、ほぼ間違いなく在留資格の許可がおります。 しかしながら、基準を満たしていない外国人に関しては、そもそも許可が下りませんし、基準を満たしているか不明な外国人が在留資格の許可をとることは非常に難しくなることになります。
当事務所では、この一年間で約20件程度の在留資格に関する手続きをしましたが、その内8名のネパール人留学生のレストランへの就職のための最高期間5年の在留許可が下りました。
問い合わせをいただく前に、数名は一旦申請し、不許可になってしまった状況でした。
基準を満たせないと判断した方はお断りしましたが、基準を満たしていると思われる方については、頑張って協力していただけるという条件でお引き受けしました。
基準を満たすことをどうやって証明するか、直接証明と間接証明を丁寧に積み重ね、書類の手直しは数十回に及び、最終的な書類の分量は70ページを超えておりました。それでも安心できません。というか、本来少なくてよい書類が分厚くなってしまうことはあまり良いことではありません。基準を満たしているか微妙だからこそ分厚くなってしまうのです。
しかしながら、難儀な書類を積み重ねることで、外国人本人や事業者様の誠実な姿勢と状況その他を、より立体的に表現することが出来ます。丁寧に丁寧に外国人の専門性を証明し、能力の高さを証明し、受入事業者様の就労状況、事業規模、遵法精神、職務内容のマッチング、今後の方針など、あまたの疑念を払拭していくことが出来ます。